28.江戸木彫刻

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木彫の歴史は古く、 一説によれば6世紀の仏教伝来とともに始まったといわれています。 平安時代から鎌倉時代に多くの仏像が彫られ、 貴族好みの優美・華麗なものからしだいに武士の気風を繁栄して 勇壮なものが多くなっていきました。 室町時代に入ると仏像を必要としない禅宗が全盛期を迎え 仏像彫刻は影をひそめ、代わって社殿や寺院の柱・欄間などに 装飾を施す建築彫刻が急速に発達し、 世に知られる名工・左甚五郎は桃山時代から江戸時代はじめにかけて 活躍した人物でした。 建築彫刻は、もともと大工が手がけていたのですが、 江戸時代に棟梁たちの中から 装飾を専業とする宮彫師が現れました。 彼らは、仏像を彫る仏師が鑿と小刀を使い分けたのに対して、 主として鑿を用いる仕事が中心。 江戸周辺で彫刻のある建築物としては、 日光・東照宮の陽明門が代表格です。 明治時代、西洋建築があちこちに現れると、 仏具や社寺の装飾にたずさわっていた職人たちも 西洋彫刻に挑戦しはじめました。 昭和初期に造営され、今も使われている国会議事堂に、 当時、300人もの彫刻師が3年以上の歳月を費やして 彫り上げた傑作が今でも残っています。 木彫に使われる材料は、欅、桧、桜、樟など いろいろです。 彫刻は、彫の技術はもちろん下絵の構成によって仕上がりの良否が決まります。 味わいのある作品を彫ろうとすれば、 絵や書はもちろんのこと、茶道、華道に至るまで、 幅広い知識を身につけることが必要なのです。

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