25.東京籐工芸

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籐は、主に東南アジアにだけ成長するヤシ科の植物です。 その性質は、軽く堅牢で弾力に富んでおり、 地球上でもっとも長い茎を持った植物といわれています。 竹と同じように節がありますが、 中は空洞ではなく繊維になっています。 太さは2ミリから50ミリぐらいまであります。 外皮が硬く細長い葉が交互に生えて、 ところどころにとげがあります。 特に、引く力に対する強度が極めて高く、 キングコングがぶら下がったぐらいでは、びくともしません。 「編む」「組む」(編組工芸へんそこうげい)のもっとも身近な素材として 利用されるのは竹ですが、竹は「巻く」「結ぶ」は苦手で、 これを満たしたのが藤でした。 籐はしなやかさにも優れ、折や曲げに耐えられない竹に代わって、 もっぱら「巻く」ことや「かがる」ことに利用されています。 竹篭の縁かがりに、しばしば籐が使われているのはこのためです。 中世の武将の手には「重籐(しげとう)の弓」が使われていましたし、 刀槍の柄や筆、笛、尺八にいたる、 様々なものに使われていました。 江戸時代には籐の網代編みの編笠、枕、 草履の表などに使われ、 明治時代には姥車(乳母車)や籐椅子が出現し、 大正時代には芯籐の造形性が注目され、 昭和の初期から、 家具類やルームアクセサリーにも用いられ、 籐の利用範囲はさらに拡大されていきました。 今日では籐製品は身近なものとなり、 高温多湿の日本の夏には、 ひんやりとしたはだざわりからホテルのロビーやレストランなどのほか、 一般の家庭など様々な場所で使われています。