21.江戸衣装着人形

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3月3日の桃の節句は、今日でも欠かすことのできない年中行事の一つになっています。 この節句は、別名を「雛祭り」と呼ばれているように、 ひな人形が主役となっています。
ひなの起源は古く、「源氏物語」にも記されています。
はじめは、都の公家などのごく限られた人々の遊び道具であったものが、 江戸時代に入り、世の中が安定し、広く庶民にも普及していきました。
江戸における人形作りが、一大飛躍を遂げたのは、 5代将軍徳川綱吉の元禄年間(1688−1704)に、 「十軒店(じゅけんだな)」で 雛市を開設したことに始まるといわれています。
十軒店は、現在の中央区日本橋室町付近のことで、 大変賑わったとの記録がのこされています。 江戸衣裳着人形には、三月のひな人形以外にも、 5月の武者人形や尾山人形、歌舞伎人形、市松人形、 御所人形などがあります。わらなどの胴体に顔や手足を付け、 衣裳を着せつけて完成させるもので、 百を超える工程を、一つ一つ丹念に仕上げていきます。 江戸時代中期に爆発的な人気を博した大阪の歌舞伎役者 「佐野川市松」の若衆姿をあらわした人形が、 今日に市松人形の名前の由来ともなっています。
江戸衣裳着人形の特長は、 江戸時代から受け継がれた技術・技法をもとに、 現代的感覚を生かした美しさや可憐さにあるといわれ、 これからも多くの人々の心をとらえていくことでしょう。