32.東京三味線

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日本の三味線の祖は、中国の三弦にあります。 三弦は中国の元におこり、 14世紀末には琉球国に伝わり 蛇皮を用いたので蛇皮線と呼ばれました。 わが国に初めて三弦が琉球から伝えられたのは、 室町時代末期永禄年間(1558-70年頃)のことで 境野港に初めて入ってきたと考えられています。 当時琵琶法師が蛇皮線を用いて 小唄や踊歌などにあわせて弾いている間に 蛇皮が破れたので、他の動物をいろいろと試み、 ついに猫皮を用いることを考え出したのです。 かくして琵琶の撥で演奏するという わが国独特の三味線が出来上がったのです。 江戸での発達は、寛永の頃に神田治光や石村近江のような名匠が現れ、 現在の三味線音楽の基礎ができあがり 歌舞伎の長唄や、義太夫、一中、常盤津、清元、新内の 邦楽の発達とともに三味線作りも発達したのです。 三味線には独特の「サワリ」という 余韻(響き)を残す現象があります。 「サワリ」の音楽的効果には日本人の民族性が関係しています。 原色よりも中間色を好む日本人は 原色よりも複雑な倍音(オーバートーン)を含む音を好むようです。 伝統的に使用されてきた原材料で 棹の部分には紅木(インド産)、紫檀、樫、花櫚、桑などが使われます。 皮張りには猫や犬の皮が使われます。