14.東京額縁

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日本では昔から、 生活空間を彩る屏風形式の絵画が愛好されてきました。 現存する古いものでは、正倉院の「鳥毛立女屏風」があります。 室町時代、足利義政の時代には豪華な金地の屏風絵が普及しました。 織豊時代に開花した桃山文化では、狩野永徳による雄大華麗な 「唐獅子図屏風」があります。 また江戸の元禄期(1688−1704)には、 俵屋宗達の「風神雷神図屏風」などがあります。

日本で額縁で本格的につくられるようになるのは明治時代を迎え 欧米文化の摂取の中で洋画(油絵)の技術が流入されてからです。

画家の指示により指物師が木枠をつくり、 仏師(仏像彫刻師)が彫刻し、塗師が漆塗り仕上げをしていました。 専門の額縁師としては明治25年(1892)、当時塗師であった長尾健吉が フランス帰りの洋画家山本芳翠の勧めで、 芝愛宕町に小工場を建てたのが最初だといわれています。

額縁の業界では、絵画を額に入れることを 「額装」(がくそう)と呼んでいます。 画家が精根傾けて描いた作品を 額で一層引き立たせたいという額縁師の心意気がうかがえる言葉です。